保険の扶養条件は?扶養の範囲・メリット・デメリットを解説
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更新日:2022/9/29
パートやアルバイトで働く場合、社会保険の扶養内で働くことで保険料負担を抑えられます。ただし、年収や親族関係など、扶養に入るための条件を把握することは重要です。この記事では、社会保険の扶養の条件や、子どもを扶養に入れる際の注意点を解説します。ぜひ参考にしてください。
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扶養控除とは
「扶養控除」とは、納税者に生活を一にする扶養家族となる人がいる場合に受けられる控除です。扶養者が扶養控除の適用を受けることで、税額負担が軽くなる仕組みです。一般的に扶養とは扶養者の収入による経済的な支援を受けることをいいます。対象になる年の12月31日現在において、配偶者や16歳以上の子ども、親、同居している親族などを扶養している場合に対象となります。
社会保険の扶養に入る条件
社会保険の扶養に入るには、被保険者との関係や収入などに関して一定の条件を満たす必要があります。
健康保険上の扶養の対象者
健康保険の被扶養者は、主として被保険者に生計を維持されている人で、3親等以内の親族が対象となります。なお3親等以内に当たるのは、配偶者(事実婚も含まれる)、子・孫、兄弟姉妹、直系尊属(被保険者の父母、祖父母、など、前の世代の血族に当たる者のこと。配偶者の父母も対象になる)です。これらの人が扶養に入る場合、必ずしも同居していなくとも対象となります。
扶養内の収入の目安
扶養に入る前提の条件は、年収が130万円未満(対象者が60歳以上もしくは障害厚生年金を受けている障害者の場合は180万円未満)かつ、被保険者の年収の2分の1未満の収入であること。また扶養の対象者が同居していない場合は、収入が被保険者からの仕送りより少ないことが条件となります。
保険の扶養が外れる年収は?
扶養に入っている人が一定の収入を得ると、扶養から外れてしまいます。なお、2022年の制度改正によって扶養控除が適用になる扶養者の収入限度額が変わる人もいるため、その点についても見ておきましょう。
現在は130万円
4~6月の3カ月分の給与を平均した報酬月額から標準報酬月額を割り出し、12カ月分で130万円を超えると、無条件で扶養から外れ、社会保険の加入が義務になります。その際、基本給のほか、残業代や交通費、住宅手当や家族手当等の諸手当を含めて計算します。130 万円を超えた場合は、住んでいる市区町村の国民健康保険、またはパートやアルバイト先の健康保険に加入します。
今後の法改正によって106万円になる場合もある
130万円の壁以外にも、注意したいのが106万円の壁。年収が106万円を超えると、月収や勤務時間などの条件によっては、勤務先の社会保険への加入義務が発生します。主な条件は以下の通りです。
- 従業員501人以上
- 1年以上の雇用見込みがある
- 週の所定労働時間20時間以上
- 月額賃金が8.8万円以上
- 学生ではない
なお法改正によって、2022年10月には「従業員101人以上、2カ月以上の雇用見込みがある」、さらに2024年10月には従業員数が「51人以上」の企業も対象になるので勤務先の労働環境は要確認です。
税制上の扶養が外れるケースは?
扶養には、保険の扶養だけでなく税制上の扶養もあります。年収が98万円未満の場合、税金を支払う義務がありません。98万円以上103万円以下の人は、地域によって住民税を納税する義務が生じます。そして103万円を超えるとさらに年収に所得税がかかります。103万円の内訳は、基礎控除額48万円+給与所得の金額による控除の給与所得控除額の最低額55万円。この103万円には交通費等は含みません。
保険の扶養内で働くメリット
扶養内で働くと税金を納めなくてよいなど、いくつかのメリットがあります。そのうち主要なものを紹介します。
保険料の納税義務がない
扶養の制限内で働くことの第一のメリットは、保険料の納税なしで国民年金を受け取れるということ。給与収入が130万円未満の場合は、国民年金の第3号被保険者の扱いになり、年金保険料の納付義務がなくなります。夫(妻)が給与所得者の場合が対象となります。なお、自営業者の場合は保険料を支払わなければなりません。
世帯収入の手取り額が増える可能性がある
年末調整や確定申告の計算を行う際に、配偶者控除、配偶者特別控除が適用されれば、被保険者の税金額を減らすことができます。年収103万円を超えた場合でも、150万円未満なら、配偶者特別控除によって満額38万円の控除が受けられます。配偶者控除(配偶者特別控除)を受けることによって扶養者が納める税金の額が抑えられ、世帯としての手取りが増える場合があります。
医療費を減額できる
配偶者が会社員や公務員であれば、配偶者の勤務先の健康保険で扶養に入れます。配偶者の勤務先から保険証が発行され、自分自身で健康保険料を払わなくても、3割負担の医療費で医療機関を受診できるようになります。
保険の扶養内で働くデメリット
このように扶養内で働くメリットはいくつかありますが、一方、デメリットもあるため、併せて覚えておきましょう。
年金の受取額が減る
扶養に入っている第3号被保険者が受け取るのは「老齢基礎年金」です。しかし、扶養から外れて自分で厚生年金に加入しないと「老齢厚生年金」は受け取れません。また年金の上乗せ制度である「付加年金」や「国民年金基金」などを利用できない。つまり、扶養に入ったままでは、老後に受け取れる年金額は少なくなるということです。
年収を考慮して働く必要がある
すでに解説したように、106万円や130万円など、一定以上の年収になると扶養から外れます。扶養内で働こうと思ったら、そうした上限額を意識して年収を調整する必要があります。そのため、働ける場所や仕事内容が限られてしまい、スキルアップが難しくなります。また、時給や勤務日数を抑えて働くため、将来のキャリアプランが描きにくいというデメリットもあります。
扶養の手続き
被扶養者が扶養に入るためには、被保険者が事業主を通して届け出をする必要があります。被保険者に被扶養者がいる場合、その事実発生から5日以内に「被扶養者(異動)届」を、日本年金機構(事務センターもしくは管轄の年金事務所)または全国健康保険組合(協会けんぽ)のどちらかに提出します。用意する書類は以下の通りです。
- 健康保険被扶養者(異動)届、国民年金第3号被保険者関係届
- 被扶養者の戸籍謄本
- 被扶養者の収入が確認できる書類(事業主の証明があれば、添付書類は不要)
- 住民票の写し(被保険者が世帯主で、被扶養者と同じ世帯であるときのみ)
子どもを扶養に入れる際のポイント
共働きの夫婦が子どもを扶養に入れる場合、収入の多い方の扶養に入れるというのが原則です。ただし、年収差が1割以内の場合は、主として生計を維持する親の被扶養者とします。
例えば、年間収入が夫は450万円、妻は400万円のケースを考えてみましょう。この夫婦の場合、年間収入の差額である50万円は、年間収入が多い夫の年収450万円の約11.1%に相当します。つまり差額が1割超のため、子どもは年間収入が多い夫の被扶養者となります。
なお、令和3年8月から取扱基準が一部変更になりました。これによって、従来の認定基準では、比較する夫婦の年間収入は「前年分の年間収入」でしたが、「今後1年間の収入見込み額」になった点も覚えておきましょう。
扶養内で働くか否かは慎重に検討しましょう
保険の扶養は、納税なしで国民年金が受け取れるなどさまざまなメリットがあります。ただし、年収などで扶養から外れてしまうため、扶養内で働くためには気を付ける必要があります。また、法改正によって扶養制度も変化しているため、その点にも注意しましょう。
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※掲載の情報は2022年9月現在のものです。保険や税制、各種制度に関して将来改正・変更される場合もあります。手続き・届け出の方法も随時変わる可能性や、自治体により異なる場合があります。
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