健康保険が適用されるもの・されないものとは?例を挙げて解説
更新日:2023/02/28
病院にかかる際、健康保険(公的な保険)が適用されるものと、適用されないものがあるのはご存じでしょうか?この記事では、今後かかるかもしれない医療費に備えて貯蓄や生命保険・医療保険などへの加入を検討している人向けに、どのようなケースが保険適用・適用外になるのか、具体例を挙げて解説します。ぜひ参考にしてください。
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健康保険が適用されるもの・適用されないもの
医療費の中には健康保険(公的な保険)が適用されるものと、されないものがあります。一般的に、病院に行って診察や治療を受けた場合、窓口での支払い時は定められた負担額(例えば3割など)を支払います。これは健康保険が適用されていることを表します。では適用されない医療費とはどのようなものを指すのでしょうか?健康保険の基礎知識、適用される医療費も併せて、以下の項目で詳しく解説してきます。
健康保険(公的な保険)とは?
健康保険とは、病気になったりけがをしたりしたときの高額な医療費の負担を軽減してくれるための制度。病気やけが、出産、それらによる休業、死亡といった不測の事態に備え、日頃から加入者が保険料を支払い、それを財源に必要な人が必要なときに保険給付を受けられる仕組みです。日本には「国民皆保険制度」があり、民間の生命保険や医療保険に加入していても、以下いずれかの公的保険への加入が必須となっています。
【勤務先で加入→被用者保険】
健康保険 | 加入者 |
---|---|
全国健康保険協会(協会けんぽ) 各種健康保険組合 |
会社勤めの人とその扶養家族(妻や子など) |
共済組合(各種共済組合) | 国家・地方公務員や私学教職員とその扶養家族など |
船員保険 | 船舶の船員とその扶養家族など |
【勤務先で加入していない人は地域保険に加入】
健康保険 | 加入者 |
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国民健康保険 | 75歳未満で被用者保険に加入していない人、自営業やその家族、年金受給者など |
【高齢者医療制度】
健康保険 | 加入者 |
---|---|
後期高齢者医療制度 | 75歳以上の人および65歳以上75歳未満で一定の障害の状態にある人 |
健康保険が適用される場合の自己負担額の割合は?
一般的に病院の窓口で負担する医療費は3割負担と知られていますが、実際には年齢や所得によって負担割合が変わってきます。そのほかにも自治体によっては「医療費助成制度」により負担金が0円になる場合などもあります。
具体的には次のようになっています。
年齢 | 負担割合 |
---|---|
6歳未満 | 義務教育就学前の6歳未満の人は2割負担 |
6歳から70歳未満 | 所得に限らず3割負担。医療機関で発生した医療費の30%を請求される |
70歳から75歳未満 | 交付される「健康保険高齢受給者証」と健康保険証を一緒に窓口に提出することで2割負担になる。例外として年収約370万円以上の所得がある人は「現役並み所得者」として70歳未満同様3割負担のまま |
75歳以上 | 交付される「後期高齢者医療保険証」と健康保険証を一緒に医療機関の窓口に提出すると1割負担になる。令和4年10月1日からは一定以上の所得がある人は2割負担(配慮措置あり)。また、70歳から75歳未満の人と同様に、年収約370万円以上の所得がある人は3割負担 |
なお1カ月の自己負担限度額が一定額を超えた場合には、「高額療養費」として払い戻しを受けられる制度があります。
高額療養費制度とは
健康保険には、医療費の自己負担額が高額になったときに負担を軽減できる制度として、「高額療養費制度」があります。暦の1日から末日まで(1カ月)に、1つの病院や診療所ごとにかかった医療費の自己負担限度額が一定額を超えた場合、本人の請求に基づきその超えた分については高額療養費として払い戻しを受けるという仕組みです。高額療養費の限度額は、年齢や所得水準等によって異なります。
例:70歳未満で標準報酬月額35万円の人が1カ月に1カ所の病院で90万円の治療費がかかった場合、支払う額は3割の27 万円ではなく、8万100円+(90万円−26万7000円)×1%=8万6430円となります。 |
健康保険が適用される医療費の例
健康保険が適用される医療費の例として以下のようなものがあります。なお、前提として、有効性や安全性が確認されているものが対象です。
・身体に異常があった際の診察・検査費
・医師が認めた場合の入院費
・治療に必要な薬、注射(厚生労働省が定める「薬価基準」にある薬のみ)
・治療に用いる治療材料費
・その他認められている処置、手術、放射線治療や精神療法、療養指導
健康保険が適用されない医療費の例
費用の種類によっては健康保険では保障されないため、それらに関しては全額自己負担しなければなりません。健康保険が適用されない医療費の例としては以下のようなものがあります。
・入院時の差額ベッド代、食事代、必要な雑費や日用品代
・通院の際の交通費
・保険適用外の治療費や手術代
・開発中の試験的な医療機器や治療法、薬を使った治療
・現在研究中のものや医学会で認められていない特殊な治療
・遠方の人が通院治療を受けるために必要な宿泊代
・家族が見舞いに来る際の交通費
・正常な妊娠・分娩(ぶんべん)に関する定期健診や出産費用
・予防注射(適用される予防注射もあり)
・健康診断、結核診断、人間ドックなど(精密検査や再検査が必要になった場合の検査費用は適用される)
・単なる疲労の場合の病院代(病気が疑われる場合は健康保険が適用される)
・美容整形手術代(歯並び矯正や二重にする手術など)
・日常生活で生じる肩凝り・腰痛などに対する整骨院での施術、はり・きゅう、マッサージなど
・業務上や通勤途中の病気やけが、事故などによって病院にかかる際の費用(労災保険の扱いになる)
・保険請求のための書類作成費用
健康保険が適用されない場合の注意点
健康保険が適用されない費用のうち、とりわけ以下の点については注意が必要です。
・適用外になる費用のうちでも、特に、まだ認められていない治療や新薬の投与などは自分の支払いが大きくなる可能性がある
・入院時に健康保険が適用されるのは一般病室。個室などの特別室に入る場合は一般病室との差額分が自己負担となる
・食事については入院中1食につき一定額を食事療養費として自己負担する必要がある
・公的医療保険の対象になる治療と、ならない治療を併せて受ける場合、原則全額が自己負担となる。ただし先進医療や治験に関する診療など、厚生労働省が認めた治療については併用が認められ公的医療保険の部分は給付対象になる
・適用されない費用や併用可能な費用については病院から必ず説明があるはずなので、事前にしっかり確認するようにする
保険適用されるものとされないものを併用できるケース
健康保険の対象外の治療は「自由診療」になるため自己負担となります。自由診療を受けると、それまで健康保険の適用があった内容についてもすべて適用外になってしまいます。ただし例外的に先進医療では、保険適用の医療と適用外の医療の併用が認められています。先進医療の技術にかかる費用は全額自己負担ですが、診察など一般の治療と共通する部分については健康保険の給付対象となるため、自己負担が軽減されます。
通勤中や業務上のけが・病気は必ず「労働者災害補償保険(労災保険)」の適用を受ける
通勤中や業務中に転んでけがをした、仕事が原因で病気になった、などの場合は健康保険による診療は受けられません。その場合、「労働者災害補償保険(労災保険)」の適用を受けることになります。仕事中にけがや病気をした場合、必ず勤務先の労災担当者に連絡し、病院へも「労災」であることを伝える必要があります。仮に間違えて健康保険証を使ってしまうと、一時的に全額支払いすることになります。後日労災として請求手続きをすれば戻ってきますが時間がかかります。
労災指定病院にかかった場合、必要書類を提出すれば支払いは生じませんが、必要書類を提出するまでは、預かり金という形式をとっている病院が多いです。また、病院外の薬局で薬などを受け取る場合は薬局にも提出が必要です。
労災指定病院以外だった場合は、窓口でいったん全額負担する必要があります。その場合は、追って必要手続きをすることで診察・診療代が後日、自分の口座に振り込まれます。
入院時の食事代や差額ベッド代、どれくらいかかる?
すでに述べたように、健康保険が適用されない費用として、入院時の食事代や差額ベッド代があります。これらにかかる費用は、おおよそ以下のような額になっています。
【入院時の食事代(1食当たりの負担額)】
一般 … 460円
低所得者(市町村民税非課税世帯など) … 210円(91日目以降160円)
70歳以上の低所得者世帯 … 100円
[一般の場合の負担額の例] (460円×3食)×30日分=4万1400円が自己負担 |
【一般病室ではなく個室に入りたい場合】
病院によっては、1日5000円から3万円近い差額が生じる場合がある
[例] 1日5000円×30日=15万円を自己負担 |
健康保険の適用外になった場合の備えが重要
医療費の中には健康保険が適用されるものとされないものがあります。適用外の費用に関しては全額自己負担となるため、具体的にどのようなものが適用外になるのか把握しておくとよいでしょう。
近年は治療の選択肢が増加していますが、その分、健康保険適用外の費用がかかるケースも多くなってきています。健康保険ではカバーできない費用がかかる事態に備えて、預貯金をする、生命保険、医療保険などに加入しておくことで安心が得られます。
ゼクシィ保険ショップでは、自分に必要な保障や、ピッタリの保険商品をアドバイスしてもらうことができます。また保険に限らず、ライフプランの作成や家計全体の見直しも行えるので、ぜひ相談してみてください。
※掲載の情報は2023年2月現在のものです。保険や税制、各種制度に関して将来改正・変更される場合もあります。手続き・届け出の方法も随時変わる可能性や、自治体により異なる場合があります。
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