社会保険の種類5つの概要とメリット・注意点などわかりやすく解説
更新日:2024/3/29
社会保険とは、生活の困難をもたらすような事態に遭遇した場合に一定の給付が受けられる公的な保険制度です。この記事では、社会保険の種類やメリット・注意点など、基本的なことについて解説します。保障の根幹となる社会保険の基本を理解するために、ぜひ役立ててください。
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社会保険とは
国民の「安心」や生活の「安定」を支えるセーフティーネットとして社会保障制度があります。社会保障制度は、「社会保険」「社会福祉」「公的扶助」「保健医療・公衆衛生」の4つから成り立っており、社会保険はこのうちの一つです。
社会保険とは、国民が病気、ケガ、出産、死亡、老齢、障害、失業など生活の困難をもたらす事態に遭遇した場合に、一定の給付を行い、その生活の安定を図ることを目的とした強制加入の保険制度と定義されています。
社会保険は国や公的な団体によって運営されており、会社員や公務員、所定の条件を満たすアルバイト・パートなどが被保険者となります。
社会保険の適用事業所に勤務する従業員で、所定の条件を満たしている場合は、雇用形態にかかわらず、必ず加入しなくてはなりません。
社会保険料は月々の給与から天引きされる
社会保険料は従業員の毎月の給与から天引きされます。社会保険料は事業主が全額負担をする労災保険料を除き、会社と従業員のそれぞれが負担しています。会社は、従業員の給与から天引きした保険料に、会社が負担する分を加えて、毎月納付しています。
社会保険の種類5つの概要
社会保険には「厚生年金保険」「健康保険」「介護保険」「雇用保険」「労災保険」の5つがあります。「厚生年金保険」「健康保険」「介護保険」の3つをまとめて「社会保険」、「雇用保険」「労災保険」の2つをまとめて「労働保険」とする場合もあります。
それでは、「厚生年金保険」「健康保険」「介護保険」「雇用保険」「労災保険」のそれぞれについて詳しく見ていきましょう。
厚生年金保険
厚生年金保険とは、企業の従業員や公務員が受け取ることができる公的年金です。20歳以上60歳未満のすべての国民が加入する国民年金保険がありますが、厚生年金保険は企業の従業員や公務員が国民年金保険の上乗せとして加入しているもので、厚生年金保険料は企業と従業員が半分ずつ負担します。
厚生年金は、原則として65歳から国民年金と併せて受け取ることができ、老後の年金額が増加します。厚生年金保険は老後だけではなく、障害を負ったときには障害年金、被保険者が死亡したときには遺族に遺族年金が支給されます。
健康保険
健康保険とは、業務外で病気やケガをしたときなどに保障が受けられる医療保険制度です。健康保険料は、企業と従業員が半分ずつ負担します。
病気やケガで病院にかかったときに、病院の窓口で健康保険証を提示しますが、これは健康保険からの給付を受けるためです。健康保険証を提示することにより、医療費の自己負担額は、かかった医療費の原則3割で済みます。
介護保険
介護保険とは、介護が必要と認定された場合に、少ない負担額で介護サービスが受けられる制度です。
健康保険の被保険者は40歳になると介護保険への加入が義務となり、介護保険料を毎月支払うことになります。介護保険料は、企業と従業員が半分ずつ負担します。
雇用保険
雇用保険とは、失業や休業をした場合に給付が受けられる制度です。雇用保険料は、企業と従業員で負担しますが、企業の方が多く負担します。
雇用保険から受けられる主な給付には以下の4つがあります。
・求職者給付
失業者の生活を安定させるとともに、求職活動をしやすくすることを目的に支給される給付
・就職促進給付
失業者の再就職を援助・促進するために支給される給付
・教育訓練給付
職業に関する教育や訓練を受けた人に対し、雇用の安定と就職の支援をするための給付
・雇用継続給付
雇用継続に努める事業主を支援するために支給される給付
労災保険
労災保険とは、業務上や通勤途中におけるケガ・病気・障害・死亡などに給付が受けられる制度です。ごく一部の事業を除き、法人・個人を問わず、労働者を1人でも雇用するすべての事業に対して、労災保険が強制適用となり、労災保険料は全額事業主が負担します。
労災保険から受けられる給付には主に次のようなものがあります。
・療養補償給付
・休業補償給付
・傷病補償給付
・障害補償給付
・遺族補償給付
・葬祭料
・介護補償給付
「健康保険」と「国民健康保険」の違い
国民健康保険とは、会社に勤めていないフリーランス、自営業、無職、年金受給者などが加入する公的医療保険制度です。健康保険などの公的医療保険制度に加入していない人は、国民健康保険に加入する義務があります。
国民健康保険は各市区町村によって運営されており、居住地によって保険料が異なります。また国民健康保険には、健康保険にある「扶養」という考え方がないため、扶養家族がいても、それぞれが国民健康保険に加入する必要があります。
なお、国民健康保険料は世帯主が世帯全員分をまとめて支払います。
社会保険の加入条件
では次に社会保険の加入条件について確認してみましょう。
健康保険・厚生年金保険の加入条件
法人の事業所および常時5人以上の従業員を抱える個人の事業所は、必ず健康保険・厚生年金保険に加入しなければなりません。被保険者は、常時雇用されている70歳未満の人となります。
アルバイトやパート、派遣社員でも次の条件をすべて満たしている場合には加入対象となります。
・週の所定労働時間が20時間以上
・月の所定内賃金が8万8000円超
・従業員数が100人超の会社に勤務(2024年10月からは従業員数が50人超)
・学生ではない
・予定雇用期間が2カ月超
介護保険の加入条件
介護保険には、健康保険に加入している40歳から64歳の人に加入義務があります。
雇用保険の加入条件
週の所定労働時間が20時間以上かつ、31日間以上引き続き雇用される見込みがある人が雇用保険の加入対象です。
この加入条件を満たしているのであれば、正規雇用者、パート、アルバイトなどの雇用形態は関係ありません。
労災保険の加入条件
ごく一部の事業を除き、法人・個人を問わず、労働者を1人でも雇用する場合には、労災保険への加入が義務付けられています。労働者には正規雇用者だけでなく、パートやアルバイトも含まれます。
社会保険に加入する3つのメリット
続いて、社会保険に加入するとどのようなメリットがあるのか見ていきましょう。
受け取れる年金額が増える
厚生年金保険に加入すると、すべての国民が加入する国民年金に加えて、厚生年金を受け取ることができ、老後の公的年金の受取額が増えます。
厚生年金の年金額は、在職中の給料の額に基づいて計算されるため、高い給料をもらっていたとか、厚生年金保険への加入期間が長いほど、受け取れる年金額は多くなります。
保険料の半分を企業が負担してくれる
厚生年金保険や健康保険に加入した場合、企業が保険料の半分を負担してくれます。国民年金保険や国民健康保険では、保険料は自分で全額を負担しなければならないため、半分の負担で済むのはメリットの一つと言えます。
傷病手当金や出産手当金が受け取れる
健康保険に加入していれば、傷病手当金や出産手当金の給付を受けることができます。
傷病手当金は病気やケガで仕事を休まなければならない場合に、出産手当金は出産で仕事を休まなければならない場合に、いずれも一定の期間、給料の3分の2程度の給付を受けることができます。
社会保険で知っておきたいポイント
最後に社会保険について知っておいていただきたいことを2つご紹介します。
所得130万円を超えると社会保険の扶養から外れる
1年間の給与所得が130万円以上になってしまうと、社会保険の扶養の対象から外れてしまい、自ら社会保険に被保険者として加入し、社会保険料を支払わなければならなくなります。これがいわゆる「130万円の壁」と言われているものです。
退職しても「任意継続」という方法がある
「任意継続」とは、健康保険の被保険者である期間が2カ月以上あった場合に、退職した後も、元の勤務先の健康保険に2年間だけ継続加入することができるという制度です。
退職すると一般的には国民健康保険に加入しますが、健康保険の方が手厚い給付が受けられ、被扶養者の健康保険料がかからないというメリットがあります。一方で、企業が負担してくれていた分の保険料も自分で負担することになるため、任意継続の選択にあたっては、よく検討する必要があります。
社会保険についてしっかりと理解しておこう
社会保険は、生活の困難をもたらすような事態にに遭遇した場合に、一定の給付を受けることができる制度です。生活の安定を図るための保障の根幹となるものですので、しっかりと理解しておくことが大切です。
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※掲載の情報は2024年3月現在のものです。保険や税制、各種制度に関して将来改正・変更される場合もあります。手続き・届け出の方法も随時変わる可能性や、自治体により異なる場合があります。
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