【2025年度版】国民健康保険料値上げと影響をわかりやすく解説

更新日:2025/5/27
2025年度から、国民健康保険料(医療分)の年間上限額が従来の89万円から92万円へ3万円引き上げられます。すでに高額な保険料を支払っている高所得者世帯では、さらなる家計負担増となる可能性があります。本記事では、なぜ保険料が値上げされるのか、どのような世帯が影響を受けるのか、そして今後の家計負担増にどう備えればよいのかを解説します。
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【2025年度】国民健康保険料の上限額が「3万円」引き上げ
国民健康保険料は、医療分の「基礎賦課額」「後期高齢者支援金等賦課額」と、介護分の「介護納付金賦課額」の3項目の合計額で算出されます。この年間保険料には上限(賦課限度額)が設けられており、2025年度からは医療分の上限が3万円引き上げられます。これにより上限額は従来の年89万円から92万円となり、さらに介護分年17万円を加えると上限額は109万円に達します。
国民健康保険料の上限額とは
国民健康保険料は、すべての加入者が負担する「均等割」と、所得に応じて負担する「所得割」の2つで構成されています。所得が多いほど所得割が高くなる仕組みですが、年々増大する医療費を考慮すると、高所得者の負担が過度に大きくなりすぎ、加入意欲の低下や制度の持続性が損なわれる恐れがあります。
そこで「賦課限度額」が設けられました。一定以上の負担には上限が適用され、超過分は徴収されません。これにより、高所得者世帯には公平な範囲で応能負担を求めつつ、中間・低所得世帯への配慮も図られています。
国民健康保険料が値上がりする理由
保険料引き上げの背景には、急速な高齢化による医療費増大への対応と、低所得者層への配慮を両立させるための財源確保の必要性があります。
高齢者医療費を確保するため
日本は世界でも有数の高齢化社会であり、後期高齢者(75歳以上)の医療給付費は年々増加しています。現行の保険料収入だけでは、膨張する医療費を賄いきれないため、保険制度の持続性を担保するためには財源の上積みが不可欠です。
賦課限度額を引き上げることで、高所得者世帯により多くの負担を求めつつ、保険料率の過度な引き上げによる中間層への影響を抑制できます。これにより、制度全体の安定運営が図られています。
低所得者層への保険料負担に配慮するため
国民健康保険加入者の多くは、企業の健康保険に加入していない自営業者やフリーランス、退職者などで、平均所得は被用者保険加入者より低い傾向にあります。
一律に保険料を引き上げると、低所得者層の生活を圧迫しかねません。そのため、まずは高所得者の上限額を引き上げ、高所得者層に負担をより強く求めることで、中間・低所得者層の保険料率の上昇幅を抑え、所得再分配の機能を維持しています。
国民健康保険料上限額の値上げで影響を受ける人
引き上げ後の医療分上限額92万円に達する収入は、給与年収約1170万円(給与所得約970万円)以上の単身世帯と試算されています。全加入世帯の約1.5%前後に当たる高所得者層が主に影響を受ける見込みのため、多くの加入者にとっては上限未到達のまま従来どおりの負担水準となります。したがって、今回の改訂は一部の高所得者層の負担増に限定され、大多数の世帯へは負担転嫁を最小限にとどめようとする狙いがあります。
押さえておきたい健康保険料の基礎知識
日本ではすべての国民が公的医療保険に加入することが法律で定められており、現役世代は「国民健康保険」か「被用者保険(社会保険の健康保険」のいずれかに加入します。両者は加入対象や保険料の仕組みが異なり、負担のあり方や負担率にも違いがあります。
社会保険の健康保険料とは
社会保険の健康保険は、会社員や公務員など被用者が加入する医療保険です。一般に「社会保険料」と呼ばれる中には、健康保険料のほか、厚生年金保険料、介護保険料、雇用保険料などが含まれますが、ここで言う健康保険料とは、医療(健康)保険に限る負担分を指します。
社会保険の健康保険料は「すべて値上げする」とは限らない
「社会保険料」は年々総じて増加傾向にありますが、健康保険料に限っていえば、すべての組合が一律に引き上げるわけではありません。健康保険を運営する団体(協会けんぽや各企業の健康保険組合など)が独自に保険料率を決定するため、加入先によっては値下げや据え置きとなる場合もあります。
全国健康保険協会(協会けんぽ)の例
前述のとおり、社会保険の健康保険料は運用している団体により異なるため一概にはいえません。ここでは、中小企業従業員を中心に最も多くの加入者を抱える公的保険団体である全国健康保険協会(協会けんぽ)を例に取って見てみましょう。保険料率は都道府県ごとに決定されますが、2025年の改訂では大分県のみ据え置き、他の46都道府県では値上げまたは値下げが行われます。
出典:協会けんぽ「令和7年度の協会けんぽの保険料率改定について」
【2025年度】全国健康保険協会(協会けんぽ)で「値上げ」する都道府県(一部例)
・北海道:10.21%→10.31%
・福島県:9.59%→9.62%
・長野県:9.55%→9.69%
・愛知県:10.02%→10.03%
・滋賀県:9.89%→9.97%
・広島県:9.95%→9.97%
・長崎県:10.17%→10.41%
【2025年度】全国健康保険協会(協会けんぽ)で「値下げ」する都道府県(一部例)
・岩手県:9.63%→9.62%
・群馬県:9.81%→9.77%
・東京都:9.98%→9.91%
・石川県:9.94%→9.88%
・大阪府:10.34%→10.24%
・香川県:10.33%→10.21%
・福岡県:10.35%→10.31%
保険料の「値上げ」など家計の負担増に備える方法
今回の改訂のように保険料の値上がりなどで家計負担が増すことがあります。長期視点での資産運用と収支管理で、制度変更リスクに備えるための基盤を築きましょう。
早くから資産形成を意識する
資産形成は時間を味方につけることが重要です。長期運用ほど複利効果が得られるため、iDeCo(個人型確定拠出年金)やつみたてNISAを活用し、少額からでも積み立て投資の習慣を身に付けましょう。また、月々の支出を見直し、固定費の削減や節約を進めることで、投資に回せる余裕資金を確保できます。
専門家に相談してライフプランを作成する
お金や保険、将来設計に関する不安を解消するには、ファイナンシャルプランナーなど専門家への相談がおすすめです。
無料相談を実施する「ゼクシィ保険ショップ」では、保険選びだけでなく家計全体の見直しやライフプラン作成まで幅広くアドバイスを受けられます。初歩的な内容から丁寧に説明してくれるため、保険や資産形成の知識がない方でも安心して利用できます。
※掲載の情報は2025年5月現在のものです。保険や税制、各種制度に関して将来改正・変更される場合もあります。手続き・届け出の方法も随時変わる可能性や、自治体により異なる場合があります。


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