「会社都合退職」で雇用保険の基本手当を受給するメリットや手続き・注意点を解説

更新日:2025/8/31
雇用保険に加入していた場合、失業時に雇用保険の基本手当を受け取れる可能性がありますが、会社都合退職の場合、自己都合退職と比べて基本手当に関してさまざまな優遇措置が設けられています。今回は、会社都合退職の定義や具体例、自己都合退職との違いから、会社都合退職で基本手当を受給するメリット、手続きの流れ、受給中の注意点までを網羅的にご紹介します。
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「会社都合退職」とは?
倒産やリストラなど会社側の事情により退職するケースを「会社都合退職」といいます。これに対し、労働者自身の意思で退職する場合は「自己都合退職」と呼ばれます。会社都合退職と自己都合退職では、基本手当の支給期間や支給額などが異なります。
会社都合退職となる場合の例
会社都合退職に該当する主なケースとして以下のものがあります。
・会社の倒産
・人員削減による解雇(リストラ)
・事業所の廃止
・希望退職制度の利用
・賃金の未払い
・有期契約社員の雇い止め
これらはいずれも、労働者側の意思ではなく、会社側の事情で雇用関係が終わるため、会社都合退職として認定されます。
「退職勧奨」による退職も会社都合退職となる
退職勧奨とは、会社が労働者に対し「辞めませんか」と退職を促す行為を指します。これを受けた労働者が同意の上退職届を提出して退職すると、形式上は自己申請に見えますが、あくまで会社の働きかけがきっかけとなるため、退職勧奨による退職も「会社都合退職」として扱われます。
会社都合退職の場合、基本手当はいつ・いくらもらえる?
ここでは、申請後の支給開始時期や所定給付日数、支給額の目安について解説します。
支給開始は7日間の「待期期間」終了後
ハローワークで基本手当の受給申請を行うと、まず手当が支給されない7日間の「待期期間」が設けられます。会社都合退職では、待期期間が終了したらすぐ支給が始まります。
所定給付日数は「90~330日間」
会社都合で退職した場合、雇用保険の基本手当は最低90日、最大で330日受給できます。もらえる日数(所定給付日数)は、退職指示の年齢と雇用保険の被保険者だった期間に応じて変わる仕組みです。年齢・被保険者期間による所定給付日数は、以下の通りです。
参考:ハローワークインターネットサービス「基本手当の所定給付日数」
支給額は給与の45~80%
基本手当の支給額は、「賃金日額(離職前6カ月間の総支給額÷180)×給付率(45~80%)」という計算式で算出されます。給付率は、離職時の年齢と賃金日額によって変わり、低賃金者や高齢者ほど高い割合が適用される傾向があります。総支給額は「基本手当日額×所定給付日数」で算出されるため、所定給付日数が長いほど、また日額が高いほど受給総額が増えます。
会社都合退職と自己都合退職の4つの違い
基本手当に関する会社都合退職と自己都合退職の相違点を、「支給開始日」「支給期間」「退職金」「履歴書記載」の4点で比較してみましょう。
基本手当の支給開始日が異なる
自己都合退職の場合、7日間の待期期間に加えて1カ月の給付制限が課されます。対して会社都合退職では、待期期間終了後すぐに支給開始されます。つまり会社都合退職の方が早く受給可能になるということです。
基本手当の支給期間が異なる
自己都合退職の所定給付日数は90~150日間なのに対し、会社都合退職は90~330日間である点も大きな違いです。会社都合退職の方がより長期的に基本手当を受け取れる可能性があり、長年勤務した場合、会社都合であれば最大で約11カ月分の給付を受けられます。
退職金の支給額に影響する場合がある
退職金制度は会社が独自に定めるため一律ではありませんが、多くの場合、会社都合退職のほうが自己都合退職よりも高い金額が支給される傾向にあります。特に倒産・リストラなどやむを得ない事情であれば、加算や優遇がある場合もあります。
履歴書の記載方法が異なる
履歴書の退職理由欄には、会社都合退職の場合「会社都合により退職」、自己都合退職の場合「一身上の都合により退職」と記載します。会社都合退職時には、備考欄に「倒産に伴う退職」「人員整理による退職」など具体的な理由を加えることで採用担当者への説明がスムーズになります。
会社都合退職のメリットとは?
会社都合退職で得られる主なメリットは、「早く受給できる」「長期間受給できる」「解雇予告手当の可能性」「退職金の優遇」の4点です。
基本手当を早く受け取れる
会社都合退職は給付制限がないため、受給資格決定後の7日間の待期期間が経過したら即座に支給が始まります。生活資金が急に必要な場合でも会社都合なら早期に手当を受け取れるのがメリットです。一方、自己都合退職では待期期間+給付制限(1カ月)が終わってからの支給開始となります。
基本手当を長期間受け取れる
自己都合退職は90~150日間の給付期間ですが、会社都合退職なら90~330日間と大幅に延長されます。特に長期加入者や高齢者は330日間の給付を受けられるケースもあるため、再就職活動が長引いた場合でも安心感が高まります。
「解雇予告手当」を受け取れる場合がある
会社は、従業員を解雇する場合、原則として30日以上前に予告する必要があります。そのため、会社が30日以上前に解雇予告を行わなかった場合、平均賃金の30日分以上を「解雇予告手当」として会社から受け取れます。予告期間が30日に満たない場合は、足りない日数分の平均賃金が支払われます。会社都合退職では、この解雇予告手当が上乗せされる可能性がある点も大きな利点です。
退職金が手厚くなる可能性がある
退職金制度は会社ごとに異なりますが、一般的に会社都合退職のほうが自己都合退職よりも高額になる場合が多いです。特に希望退職制度や早期退職優遇など、会社側からの提案に応じた退職では加算金が出るケースもあります。
会社都合退職のデメリットとは?
会社都合退職にもいくつかのデメリットがあるため、注意する必要があります。
予期せぬタイミングで退職せざるを得ない
会社側の都合で一方的に退職時期が決まるため、予期しないタイミングでの退職になる可能性が高くなります。準備不足のまま退職を迎えると、資金繰りや転職活動への影響が大きくなる可能性があります。
転職活動で不利になる場合がある
履歴書や面接で「会社都合退職」と記載・説明が必要となります。倒産の場合は比較的理解が得られやすいものの、懲戒解雇や退職勧奨の場合は詳しい経緯を聞かれることがあります。また、突然の退職通知で準備期間が取れず、転職活動が長期化するリスクも考慮しましょう。
会社都合退職で基本手当を受け取るための手続き
会社都合退職受給で基本手当を受けるための手続きを、ステップごとに見ておきましょう。
1 必要な書類を準備する
受給申請にあたり、以下の書類等をあらかじめ用意してください。
・雇用保険被保険者離職票(1、2)
・写真(縦3cm×横2.4cm):2枚(※マイナンバーカード提示により省略可)
・個人番号確認書類:1種類(マイナンバーカード、通知カード、個人番号の記載のある住民票のいずれか)
・身元確認書類:(1)の場合1種類、(2)の場合は2種類
(1)マイナンバーカード、運転免許証、運転経歴証明書、官公署発行の身分証明書、写真付きの資格証明書など
(2)公的医療保険の被保険者証、児童扶養手当証書など
・本人名義の預金通帳またはキャッシュカード
2 ハローワークで手続きする
必要書類を持参の上、居住地を管轄するハローワークへ行き、求職申し込みと離職票等の提出を行います。提出日が「受給資格決定日」となり、その後、雇用保険の説明会の日程案内があります。
3 「雇用保険受給者初回説明会」に行く
参加は必須で、「雇用保険受給資格者証」「失業認定申告書」を受け取ります。また、第1回の失業認定日が通知されます。必ず指定日時に出席しましょう。
4 求職活動を開始する
第1回失業認定日までに、求人への応募やハローワーク窓口での相談、セミナー受講など最低1回以上の求職活動が必要です。活動内容は認定申告書に記入します。
5 ハローワークに「失業認定申告書」を提出する
認定日にハローワークへ出向き、申告書を提出して失業の認定を受けます。以降、原則4週間に1度のペースで認定手続きを繰り返します。
基本手当が支給される
失業認定を受けた後、通常5営業日以内に指定口座へ振り込まれます。支給は所定給付日数の限度まで続き、再就職が決まるまで受給可能です。ただし、認定日はきちんと受け続ける必要があります。
基本手当受給中の注意
基本手当を受給している期間は、ルール遵守が不可欠です。違反すると受給資格が失われる可能性があるので、ルールをしっかり把握しておきましょう。
待期期間中のアルバイトは避ける
待期期間中にアルバイトをすると「離職していない」とみなされ、受給が遅延・停止される可能性があります。最低7日間は収入を得ないよう注意が必要です。
アルバイトには日数・時間の制限がある
受給期間中に週20時間以上の就労や31日以上の雇用見込みがあると、受給資格が失われます。短期・少時間の仕事にとどめ、必要に応じてハローワークへ相談してください。
ハローワークへの申告は必須
収入が発生した場合、必ずハローワークへ申告しなければ不正受給と見なされます。アルバイトをする際は、所得の有無や日数を正確に報告しましょう。
再就職が決定したら受給停止手続きをする
再就職が決まったら速やかにハローワークへ報告し、基本手当の受給停止手続きを行います。条件を満たせば「再就職手当」(お祝い金)が支給される場合もあるため、詳細は窓口で確認してください。
制度をよく把握しておくことが大切
会社都合退職では、自己都合退職と比較して基本手当の支給開始が早く、所定給付日数も長期化しやすいため、生活のセーフティネットとして大きなメリットがあります。加えて、解雇予告手当や退職金の上乗せなど、会社側の都合で退職する際の優遇措置をしっかり把握しておくことが重要です。一方で、退職時期を自ら選べないことや、転職活動での説明責任が増すデメリットもあります。受給手続きはハローワークでの書類提出から失業認定、支給開始まで一連のステップを踏む必要がありますので、必要書類を漏れなく準備しましょう。
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※掲載の情報は2025年8月現在のものです。保険や税制、各種制度に関して将来改正・変更される場合もあります。手続き・届け出の方法も随時変わる可能性や、自治体により異なる場合があります。


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