不妊治療は生命保険の対象?不妊治療の費用の目安や保険の選び方
更新日:2024/6/28
2022年4月より不妊治療が公的健康保険の適用になり、不妊治療が支払い対象になる生命保険(医療保険)が増えました。不妊治療はお金がかかるイメージがあるため、生命保険で備えたいと考えている夫婦もいるのではないでしょうか。
しかし、すでに不妊治療を始めている場合は生命保険の加入が難しかったり、加入できても保障に制限が付いたりします。いずれ子どもを持つことを考えている夫婦は、不妊治療の有無にかかわらず、早めに生命保険を準備した方がいいでしょう。
この記事では、結婚を機に子どもを考えている夫婦に向けて、不妊治療の現状や、不妊治療と生命保険の関係についてわかりやすく解説します。結婚後の保険加入で悩んでいる人は、判断の参考にしてください。
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不妊治療とは
一般的に、子どもを授かりたいのに妊娠しにくい状況にある場合、原因に応じた治療をすることを不妊治療と言います。
日本産科婦人科学会によると、不妊の定義は「健康な男女が避妊なしで性交をしているにもかかわらず、1年以上妊娠しない状態」です。不妊にはさまざまな原因が考えられますが、特定できる原因が見つからないこともあります。
参考:公益社団法人 日本産科婦人科学会「不妊症」
不妊治療の現状
近年は不妊治療に取り組む夫婦が増え、赤ちゃんの約12人に1人は生殖補助治療で生まれているという調査結果もあります。不妊治療の現状を見ていきましょう。
夫婦の4.4組に1組が不妊の検査・治療を受けたことがある
国立社会保障・人口問題研究所が2021年6月に実施した調査によると、不妊について心配したことがある夫婦の割合は39.2%でした。治療の有無にかかわらず、3組に1組以上は不妊の心配をしているということです。
そんな中、実際に不妊の検査・治療を受けたことのある夫婦の割合は22.7%。結婚 5年未満の夫婦でも、6.7%が「不妊に関する検査や治療を現在受けている」と回答しています。
新婚夫婦を含め、およそ4.4組に1組の夫婦に不妊治療の経験がある状況は、子どもを持つ上で不妊治療が身近な選択肢になっていることを表しています。ただし、本調査は公的健康保険適用前に行われた調査です。公的健康保険が適用された今では、本調査時よりもさらに多くの夫婦が治療を受けているのではないでしょうか。
参考:国立社会保障・人口問題研究所「第16回出生動向基本調査(結婚と出産に関する全国調査)」
赤ちゃんの約12人に1人が生殖補助治療で生まれている
日本産科婦人科学会の報告によると、2021年に体外受精や顕微授精などの生殖補助治療によって生まれた赤ちゃんは6万9797人です。同年に生まれた赤ちゃんの全出生数81万1622人に対して約8.6%で、約12人に1人の割合となります。
ただし、上記の「生殖補助治療」には、タイミング法や人工授精といった一般不妊治療は含まれていません。こうした一般不妊治療をしている夫婦や、サプリメントやはり・きゅうなどの民間療法に取り組んでいる夫婦も含めると、不妊治療によって誕生した赤ちゃんの割合はさらに高くなるでしょう。
参考:公益社団法人「日本産科婦人科学会」
「2021年 体外受精・胚移植等の臨床実施成績」より
2022年4月から不妊治療の公的健康保険適用範囲が拡大
先述のとおり、2022年4月からは不妊治療が公的健康保険の適用対象になっています。
<主に対象となる治療>
・一般不妊治療:タイミング法、人工授精
・生殖補助治療:採卵・採精、体外受精・顕微授精、受精卵・胚培養、胚凍結保存、胚移植
2022年4月以前は、体外受精や顕微受精などの不妊治療費の窓口負担割合は10割でした。ところが公的健康保険適用後は窓口負担割合が原則3割となり、負担額は大きく軽減しています。ただし、公的健康保険の適用には条件があります。詳しく見てみましょう。
厚生労働省「令和4年4月から、不妊治療が保険適用されています。」
不妊治療の公的健康保険適用には条件がある
不妊治療の公的健康保険適用には、年齢や回数の制限があります。
<条件>
・年齢:治療開始時の女性の年齢が43歳未満
・回数制限:
初めての治療開始時点の女性の年齢 | 回数の上限 |
---|---|
40歳未満 | 通算6回まで(1子ごとに) |
40歳以上43歳未満 | 通算3回まで(1子ごとに) |
参考: 令和4年4月から、不妊治療が保険適用されています。|厚生労働省
不妊治療にかかる費用の目安
一般的に、不妊治療は以下のステップで進めていきます。
1.タイミング法
2.人工授精
3.体外受精
ここでは、それぞれのステップでかかる不妊治療費の目安を解説していきましょう。
1.タイミング法
タイミング法(タイミング療法)とは、医師が排卵時期を予測して性交渉のタイミングをアドバイスして妊娠の可能性を高める不妊治療法です。排卵時期を推定するため、基礎体温の確認や超音波検査などを行います。
一般的なタイミング法の費用目安は、1周期につき、保険適用で数千円程度です。組み合わせる検査によって費用は変動しますが、1万円以上になることはほとんどないでしょう。
2.人工授精
人工授精とは、女性の排卵時期に合わせてパートナーの精子を子宮内に注入する方法です。あらかじめ医師が予測した排卵時期にパートナーの精液を採取して病院に持参し、病院側が洗浄・濃縮した良好な精子を子宮内に注入します。
一般的な人工授精の費用目安は、1周期につき、保険適用で1万円前後です。排卵誘発剤など他の薬剤を組み合わせる場合は、費用が多少変動します。
3.体外受精
体外受精とは、女性の卵巣から卵子を取り出し、体外でパートナーの精子と受精させて子宮に戻す方法です。よく言われる顕微授精も、体外受精の一種です。
体外受精・顕微授精の費用目安は、1周期につき、保険適用で10万~20万円程度です。採卵できた卵子の数や受精個数など、さまざまな要素で費用が変動します。
不妊治療で利用できる公的な制度
不妊治療が公的健康保険適用になったことで、高額療養費制度などの制度を活用できるようになりました。
公的健康保険適用以外に活用できる公的な制度を紹介します。
高額療養費制度
高額療養費制度とは、1カ月(月の最初から最終日まで)の間に医療費の自己負担額が上限額を超えた場合、超えた部分のお金が払い戻される制度です。上限額は、年齢や所得により異なります。
例えば、70歳未満で年収370万~770万円程度であれば、上限額は約8万~9万円が目安です。加入している健康保険によっては高額療養費制度に付加給付があり、最終的な自己負担額が3万円程度になる人もいます。
参考:
厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」
助成金
不妊治療が公的健康保険適用になったことで、各自治体で実施されていた「特定不妊治療費助成制度」は終了しました。しかし、公的健康保険適用の条件に該当せず全額自己負担になる人や、一部の先進医療技術による不妊治療については、助成制度が実施されていることがあります。
例えば東京都では、条件を満たせば以下の助成金を受け取れます。
・不妊検査および一般不妊治療にかかった費用:夫婦1組につき5万円を上限に助成(1回限り)
・特定不妊治療と併せて実施した先進医療にかかった費用:先進医療費用の10分の7について、15万円を上限に助成
助成内容は自治体によって異なるため、詳細はお住まいの自治体ホームページでご確認ください。
参考:
東京都福祉局「東京都不妊検査等助成事業の概要」
「東京都特定不妊治療費(先進医療)助成事業の概要」
不妊治療に備えた生命保険の選び方
公的健康保険の適用によって、従前よりも不妊治療費の負担は大きく軽減されました。
しかし、公的制度や助成金で軽減されるのはあくまで直接かかった治療費のみです。病院やクリニックでの治療に加えて、はり・きゅうやサプリメントといった民間療法を試せば費用がかかります。また、治療のために仕事を制限すれば、その分収入が減少するでしょう。不妊治療が長期に及ぶ場合さまざまな費用が積み重なることが想定されるため、生命保険も別途備えておくと安心です。
ただし、不妊治療を始める前と始めた後では、生命保険の選び方は異なります。詳細を解説していきましょう。
不妊治療前に生命保険に加入する場合
不妊治療を行う前であれば、生命保険の選択肢は広がります。
不妊治療に備えられる保険商品としては、人工授精や体外受精、顕微授精といった不妊治療が「手術給付金」の対象になる医療保険があります。保険会社や商品によっては支払い対象外になることがあるため、加入前に支払い対象の範囲をよく確認しておきましょう。
また、最初から不妊治療に特化して保障を手厚くしている商品もあります。ただし、不妊治療特化型商品の場合、加入後一定期間は支払い対象外となるケースがほとんどです。
不妊治療中に生命保険に加入する場合
すでに不妊治療を始めている場合、不妊治療に適応している医療保険には加入できないか、加入できても一定期間制限が付くことが予想されます。
加入できた場合の制限は、不妊治療~妊娠・出産に関連する保障が一定期間対象外となるケースが多くなっています。ただし、保険会社・商品によって対応は異なるため、加入審査を受けてみなければどのような制限が付くかはわかりません。
保険選びに迷ったらプロに相談
結婚後は不妊治療の有無に限らず、早めに保険を備えておくと安心です。
特に医療保険は不妊治療や妊娠・出産時に支払い対象となるケースが多く、ただでさえ不安の多い妊娠・出産期の心強いサポートになります。また、出産後は子育てで多忙になるため、妊娠・出産後の人生設計のシミュレーションを今からしておけば先の見通しも立てやすいでしょう。
結婚後はどのような備えが必要なのか、自分たち夫婦にはどのような保険が適しているのか。迷ったらファイナンシャルプランナーなどのプロに相談し、適切な保障を用意してください。
まとめ
不妊治療にかかる費用には公的健康保険が適用され、高額療養費制度や自治体の助成金活用も可能です。しかし、保険適用には年齢や回数の制限がある上、保障される費用はあくまで治療にかかった費用のみ。治療で仕事をセーブした際の収入減少や、サプリメント、民間商品の購入費などは自分で備えなければなりません。
不妊治療や妊娠・出産にかかる費用を生命保険で備えたい人は、できる限り不妊治療前、結婚後すぐの加入をおすすめします。結婚によって保険を考えることで、この先の人生設計や資金のことを夫婦で話す良い機会になるのではないでしょうか。
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※掲載の情報は2024年6月現在のものです。保険や税制、各種制度に関して将来改正・変更される場合もあります。手続き・届け出の方法も随時変わる可能性や、自治体により異なる場合があります。
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