結婚により可能な節税方法は?節税の注意点もわかりやすく解説
更新日:2021/10/26
結婚によって得られるさまざまなお金に関する制度をご存じでしょうか?そうした制度を積極的に活用した節税の結果、月々の手取り額や、貯蓄に回せるお金が増えるかもしれません。そこでこの記事では、結婚を機に知っておきたいお金や制度に関する内容やメリット、注意点などを紹介します。
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結婚・子育て資金を贈与してもらう場合
贈与税に関わる制度で、子や孫(受贈者)が、結婚や出産、育児などを目的に親や祖父、祖母といった直系尊属(受贈者)から贈与を受け取った場合に、一定額まで非課税になる「結婚・子育て資金の一括贈与の特例」というものがあります。
2015年の税制改正で創設された制度で、親族からの支援を受けやすくすることで、結婚や出産にかかる費用負担をなるべく軽減させることを目的としたものです。もともと2019年までの特例措置でしたが、税制法改正によって2023年3月31日まで期間が延長されました。
1000万円までの贈与税が非課税に
毎年110万円まで非課税となる暦年贈与と異なり、この制度では、1000万円までの贈与税が非課税となります。このうち結婚費用に充てられるのは、300万円が限度と定められています。なお具体的には、結婚・子育て資金の「結婚」の費用には、婚礼、披露宴費用、新居の住居費などが、「子育て」の費用には、不妊治療費、妊娠中の通院費、子どもの医療費、保育料などが該当します。
適用条件
この特例の適用を受けるためには、贈与者と受贈者それぞれに関していくつかの要件を満たしている必要があります。
・贈与者の要件
直系尊属であること。ここでの直系尊属とは、受贈者の父、母、祖父、祖母などを指します。
血縁や養子縁組による親族関係は含みますが、婚姻による親族関係は含みません。
・受贈者の要件
⑴結婚・子育て資金管理契約を締結する日において18歳以上50歳未満であること
⑵信託受益権等を取得した年の前年分の所得税の合計所得金額が1000万円以下である者
メリット・注意点
・メリット
もともとは、祖父、祖母から孫に「結婚・子育て資金の一括贈与」がされ、その祖父、祖母が亡くなった時点で残高があると、一般
的な相続税が課されていました。しかし、2021年の改正によって、孫などの直接の相続人でない人に残高があった場合、相続税額の2割加算されることとなりました。
とはいえ、贈与された資金の残高を遺産として、亡くなった祖父、祖母の財産に戻すといったことをする必要はありません。2割加
算とはいえ相続税さえ払えば、贈与されたままで済む点はメリットといえます。
・注意点
まず、贈与のための口座開設や、結婚や出産などの目的のために使用した分の領収書等の提出など、いくつかの手続きが必要です。また、子や孫が、50歳の時点で残額を使いきっていないと贈与税が課される点や、贈与者が死亡した場合には特例が消滅してしまう点は注意が必要です。
配偶者の所得が扶養内である場合
納税者本人や配偶者が一定の条件を満たしていれば、所得から一定の額が控除される「配偶者控除」や「配偶者特別控除」という制度があります。
配偶者に48万円(2019年分以前は38万円・パートであれば給与所得控除<55万円>後の金額)を超える所得があると、配偶者控除が受けられなくなりますが、そうしたケースでも、配偶者の所得金額に応じて、一定金額の所得控除が受けられるという制度が配偶者特別控除です。
控除額
配偶者控除の控除額は、控除を受ける納税者本人の合計所得金額や、控除対象配偶者の年齢によって次のようになっています。
控除を受ける 納税者本人の 合計所得額 |
控除額 | |
---|---|---|
一般の控除対象 配偶者 |
老人控除対象 配偶者(※) |
|
900万円以下 | 38万円 | 48万円 |
900万円超 950万円以下 |
26万円 | 32万円 |
950万円超 1000万円以下 |
13万円 | 16万円 |
出典:国税庁「No.1191 配偶者控除」
配偶者特別控除の控除額は、控除を受ける納税者本人のその年における合計所得金額や配偶者の合計所得金額に応じて次のようになります(令和2年分以降)。
配偶者の 合計所得額 |
控除を受ける納税者本人の 合計所得金額 |
||
---|---|---|---|
900万円以下 | 900万円超 950万円以下 |
950万円超 1000万円以下 |
|
48万円超 95万円以下 |
38万円 | 26万円 | 13万円 |
95万円超 100万円以下 |
36万円 | 24万円 | 12万円 |
100万円超 105万円以下 |
31万円 | 21万円 | 11万円 |
105万円超 110万円以下 |
26万円 | 18万円 | 9万円 |
110万円超 115万円以下 |
21万円 | 14万円 | 7万円 |
115万円超 120万円以下 |
16万円 | 11万円 | 6万円 |
120万円超 125万円以下 |
11万円 | 8万円 | 4万円 |
125万円超 130万円以下 |
6万円 | 4万円 | 2万円 |
130万円超 133万円以下 |
3万円 | 2万円 | 1万円 |
適用条件
配偶者控除の対象となる条件は以下のようになっています。
①民法の規定による配偶者であること
②本人と生計を一にしていること
③年間の合計所得金額が48万円以下であること
④青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払いを受けていないことまたは白色申告者の事業専従者でないこと
配偶者特別控除の対象となる条件は以下のようになっています。
①民法の規定による配偶者であること
②納税者本人と生計を一にしていること
③青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払いを受けていないこと、または白色申告者の事業専従者でないこと
④年間の合計所得金額が48万円超133万円以下であること。パートタイマーなど給与収入であれば、年間103万円超201万6000円未満であること
⑤次の1~3の配偶者特別控除を受けていないこと
1.配偶者が、配偶者特別控除を適用していないこと
2.配偶者が、勤め先へ提出する扶養控除等申告書で源泉控除対象配偶者がいるとして源泉徴収されていないこと(その後の年末調整や確定申告で配偶者特別控除を受けなかった場合等を除く)
3.配偶者が、公的年金等の扶養親族等申告書で源泉控除対象配偶者がいるとして源泉徴収されていないこと(その後の年末調整や確定申告で配偶者特別控除を受けなかった場合等を除く)
メリット・注意点
・メリット
配偶者控除のメリットは、手続きが簡単ということ。税務署に事前の申請が必要ありません。配偶者控除により納税者本人の手取り額が増える上、配偶者も非課税でパート収入等を得られ、結果として家計収入がプラスになる点は大きなメリットです。
・注意点
納税者本人の所得が1000万円を超えてしまうと、配偶者が収入をコントロールしても、そもそも配偶者控除を受けられない点は注意が必要です。
医療費がふたり合わせて10万円以上になる場合
1年間に多くの医療費を支払った場合に、所得控除が受けられる医療費控除。医療費控除では、本人だけでなく、生計を同じくする家族の分も合わせて控除することが可能です。
医療費控除では、「実際に支払った医療費」から「保険金などで補填(ほてん)される金額」と「10万円」を引いた額が控除の対象となります。医療費は病院や調剤薬局で支払ったものだけではなく、市販されている医薬品の購入や医療機関を受診した際の交通費なども対象となります。
▼医療費控除額の計算式
※総所得金額200万円までの方は所得金額の5%が控除対象になります
個人事業主として配偶者に給料を支払う場合:青色事業専従者給与
個人事業主として配偶者や子どもなどに仕事を手伝ってもらっている場合、家族従業員は税制上「専従者」と呼ばれますが、基本的にその給与は経費とみなされません。
ただし例外として、青色申告で事前に必要な手続きをしていると、専従者に支払った給与を「青色事業専従者給与」として経費にすることで、事業で獲得した所得を配偶者に分配して本人の所得税率を下げられます。
なお、青色事業専従者給与は配偶者控除とどちらか片方しか選択できないので注意が必要です。
適用条件
給与が経費になるには、以下の条件を全て満たしている必要があります。
・本人が青色申告者であること
・「青色事業専従者給与に関する届出書」を税務署に提出していること
・本人と生計を一にする配偶者であること(15歳以上の親族を含む)
・原則、本人の事業に従事する期間が6カ月を超えること
・届出書に記載されている「方法(月給や賞与)」と「金額の範囲内」で給料が支払われていること
・給与の設定額が配偶者の労働の対価として相当であると認められる金額であること
メリット・注意点
・メリット
青色事業専従者給与のメリットは、本人と配偶者の所得税率のコントロールがしやすくなるという点です。
・注意点
税務署に事前の申請が必要なため、手続きの手間が掛かります。また、パート収入など事業収入以外とは別口の家計収入が得られないことや、結婚後6カ月を経過しないと利用できない点も注意が必要です。
まとめ
結婚をすると、税金面でさまざまなメリットが得られる場合があります。制度の恩恵が受けられる立場なのに、知らなかったばかりに使いそびれてしまったらもったいないです。ぜひ参考にしてみてください。
※ゼクシィ保険ショップでは、税金に関するご相談は承っておりませんのでご注意ください。
※掲載の情報は2021年10月現在のものです。保険や税制、各種制度に関して将来改正・変更される場合もあります。手続き・届け出の方法も随時変わる可能性や、自治体により異なる場合があります。
RT-00464-2110