医療費控除とは?
還付金の計算や確定申告の手続き方法
更新日:2020/10/27
確定申告で「医療費控除」の手続きをすると医療費の一部が戻ってくると聞くけれど、使った医療費のすべてが対象なのか、どう申請をすればいいのかなど、よく分からないという人は多いのではないでしょうか。
- そもそも医療費控除って何?
- 結局いくらお金が手元に戻ってくるの?
- どうやって申告したらいいの?
など、医療費控除について詳しく解説します。
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医療費控除の対象かどうかを確認する
医療費控除とは、年間の医療費が10万円を超えた場合に確定申告で所定の手続きをすることで、所得税、住民税の負担が軽減され、手元にお金の一部が戻ってくる制度です。
医療費控除の対象
1.対象期間
- 1年間(1月1日から12月31日まで)
2.対象となる医療費
- 基本的に、保険金等を差し引いた年間10万円を超える実際に支払った医療費が対象
- 納税者本人のほか、生計を共にしている配偶者や親族も対象
- 住宅ローン控除との併用で節税効果が期待できる(ただし住民税の軽減には限度があるので注意が必要)
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医療費控除は、本人だけでなく扶養している家族も対象になるため、子どもが小児科にかかった際の医療費なども含めることが可能です。
ポイント1.年10万円以下でも
医療費控除の対象になるケースがある
医療費控除は原則、年間の医療費負担が10万円超にならなければ受けられないと説明しました。しかし、10万円以下でも対象になることがあります。総所得金額等が200万円未満の場合は、10万円ではなく、総所得金額等の5%を超えていれば、医療費控除を受けられます。
会社員であれば、源泉徴収票で総所得金額を確認できます。源泉徴収票のうち総所得金額に当たるのは、「給与所得控除後の金額」の箇所。勤め先が1社で他に副業や収入がない場合は、この金額で判断して問題ありません。
(例)総所得金額150万円の場合
150万円 × 5% = 7万5000円
→年間の医療費負担7万5000円超の部分について医療費控除が受けられます。
ポイント2.医療費控除の対象になるもの・ならないものリスト
医療費控除は医療費を対象にした所得控除ですが、医療に関わるすべての費用が対象になるわけではありません。医療費控除の対象になるもの、ならないものを簡単に見ていきましょう。
医療費控除の対象 | 医療費控除の対象でないもの | |
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診察 ・ 通院 |
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入院 ・ 手術 |
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歯科 |
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眼科 |
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医薬品 |
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医療用具 |
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医療用具 |
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その他 |
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(※)は、条件次第では医療費控除に含めることができます。
ポイント3.例外で医療費控除の対象になるもの
【ケース1】人間ドックで異常が見つかり治療を始めたとき
通常、健康診断や人間ドックの費用は医療費控除の対象になりません。しかし、検査によって異常が見つかり治療を始める場合は、治療前の診察と同じと考えられ、医療費控除の対象に含めることができます。
【ケース2】子どもの通院や入院で付き添いが必要になったとき
小さい子どもの通院や入院で付き添いが必要な場合、医療費控除で認められる交通費は控除対象になります。
【ケース3】インプラントなど高額な歯科治療を受けたとき
歯科は、使用する素材によって治療が高額になることがあります。自由診療で健康保険適用対象外になる、ゴールドクラウンや一部インプラントなどです。こうした高額な治療でも基本的には医療費控除の対象に含めることができます(ただし、審美目的など著しく水準を上回る治療費は対象外)。
【ケース4】親が寝たきりになっておむつが必要になったとき
原則、おむつ代は医療費控除対象外ですが、傷病などで医師による治療を受けており、寝たきりの状態が6カ月ほど続いた場合は医療費控除に含めることができます。この場合、医師より「おむつ使用証明書」を発行してもらう必要があります(
医療費控除を行う初年度のみ
)。
【ケース5】歩行が困難で公共交通機関が利用できないとき
基本的にタクシー代は医療費控除対象になりませんが、公共交通機関を利用できない場合の交通費は別です。歩行が困難な場合、緊急の場合、妊娠中で公共交通機関が利用できない場合、地域的に公共交通機関の利用が難しい場合は、タクシー代の計上が認められます。
※参考:
国税庁ホームページ
医療費控除の対象となる金額
医療費控除の金額と、還付金がいくら受け取れるのかは、それぞれ以下の計算に当てはめると分かります。
医療費控除の計算方法
※1生命保険契約による保険金支払額、健康保険から支給される高額療養費など
※2総所得金額200万円未満は総所得金額の5%
所得税の速算表
医療費控除の額すべてが還付されるのではなく、課税所得の所得税率に合わせて還付金が決まります。以下が還付金の計算方法です。
医療費控除の額 × 所得税率(※) = 還付金
課税所得額 | 所得税率 | 控除額 |
---|---|---|
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万超330万円以下 | 10% | 9万7500円 |
330万超695万円以下 | 20% | 42万7500円 |
695万超900万円以下 | 23% | 63万6000円 |
900万超1800万円以下 | 33% | 153万6000円 |
1800万超4000万円以下 | 40% | 279万6000円 |
4000万円超 | 45% | 479万6000円 |
※国税庁 所得税の速算表 (令和2年4月1日現在法令等)より作成
医療費控除と還付金の計算例
会社員Aさんの例を見ていきましょう。
- 源泉徴収票の給与所得控除後の金額 350万円
- 源泉徴収票の所得控除の額の合計額 100万円
- この年のAさんの医療費 年間100万円
- 保険金等で補填(ほてん)された金額 30万円
【医療費控除の計算】
1. 年間の医療費負担額
100万円 – 30万円 = 70万円
2. 医療費控除の額
70万円 – 10万円 = 60万円
【還付金の計算】
1. 課税所得
350万円 – 100万円= 250万円
2. 還付金の額
60万円× 10%※ = 6万円
※課税所得250万円の所得税率10%
医療費控除を受けるための手続き
【医療費控除を申請するための3ステップ】
医療費控除は、以下のような流れで申請します。
- 医療費控除明細書の作成
- 確定申告書該当欄への記入
- 確定申告
医療費控除の申告に必要な書類【平成29年から改正】
医療費控除を受けるには、以下いずれかの提出が求められます。
- 医療費控除の明細書・・・・・・領収書を基に自身で作成した書類
- 医療費通知・・・・・・医療保険者発行の書類で規定の記載があるもの
健康保険組合や協会けんぽなどが発行する「医療費のお知らせ」は、医療費通知として利用できます。
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平成29年(2017年)以降は、上記いずれかの書類提出に切り替わっています。以前は確定申告時に医療機関等の領収書の添付や提示が必要でしたが税制改正によって簡略化されました。
医療費控除を申請する書類の書き方を見ていこう
【確定申告書の書き方】
医療費控除を受ける場合、確定申告書第一表と第二表の該当欄に金額を記入する必要があります。(確定申告書にはAとBがありますが、会社員の場合は確定申告書Aを使用します)
1. 確定申告書 第一表
医療費控除の額を記入します。区分は、通常の医療費控除を受ける場合は空欄のままにしておきます(セルフメディケーション税制を利用する場合のみ1を記入)。
2. 確定申告書 第二表
「所得から差し引かれる金額に関する事項」のうち、18番の医療費控除の部分に記入します。「支払医療費等」は補填(ほてん)額や10万円などを差し引く前の実際にかかった年間医療費の金額。「保険金などで補填される金額」は、保険金や高額療養費等による補填(ほてん)の合計額です。
【医療費控除の明細書の書き方】
- 医療費通知を添付する場合
医療費控除の明細書のうち、赤枠にある「1 医療費通知に関する事項」の(1)~(3)に金額を記入します。
- 医療費通知を添付しない場合
領収書を基に、青枠の治療を受けた人の氏名、病院等の名称、医療費の区分、負担した医療費の額、補填(ほてん)された額を個別に記入していきます。
- 共通の記載項目
医療費控除の計算の基になる項目です。「3控除額の計算」のうち、支払った医療費と保険金などで補填(ほてん)される金額は申告書の第二表、医療費控除額は第一表と同じ金額になります。
医療費控除のミニ知識
医療費控除に関するミニ知識を4つ紹介します。
1. ドラッグストアの薬も医療費控除となる
医療費控除は、治療を目的とした医療費や付随する費用が対象です。しかし、平成29年(2017年)より適用されることになったセルフメディケーション税制によって、治療目的以外の薬代を控除できるようになりました。
対象の薬は、医師処方の医薬品と、第1類医薬品から第3類医薬品含む一般用医薬品(スイッチOTC医薬品)で税制対象になっているものです。
セルフメディケーション税制の対象品目は
こちら
から確認できます
【セルフメディケーション対象薬はどこで判断する?】
セルフメディケーション税制の対象になる医薬品かどうかは、以下のようなマーク、領収書の表示によって判断できます。
- セルフメディケーション対象のマーク
【セルフメディケーション税制利用の注意点】
- 年間1万2000円を超えた額が対象(上限8万8000円)
- 本来の医療費控除と併用して利用できない
- 適用を受けるには健康診断や予防接種などの「 一定の取組 」を行わなければならない
- 「 一定の取組 」にかかる費用はセルフメディケーション税制の対象外
- 確定申告時にセルフメディケーション税制の明細書を添付する必要がある
2. 妊娠や出産したときの医療費控除
一般的に治療には当たりませんが、妊娠や出産時の医療費は医療費控除に含めることができます。
【医療費控除の対象になる費用の例】
- 妊娠中の定期検診や検査
- 妊娠中の入院費や食事代
- 出産や分娩(ぶんべん)の費用
- 赤ちゃんの入院費用
出産育児一時金などの支給があれば、出産費用の補填(ほてん)分として差し引く必要があります。医療費負担の軽減に関係しない健康保険法などの出産手当金は補填(ほてん)額に上げる必要はありません。
3. 領収書のない交通費の医療費控除
通院にかかった交通費で、バスや電車など、基本的に領収書が発行されない分の請求は可能なのでしょうか? 領収書がない場合は、利用年月日と、利用区間、金額を詳細に記録しておけば、領収書の代わりとなり、医療費控除が受けられます。
4. 保険金の確認を忘れずに!
民間の医療保険などの保険金を受け取った場合、補填(ほてん)があったものとして、医療費負担額から差し引かなくてはなりません。この場合、保険金を合算して差し引く必要はなく、個別の通院や入院ごとの保険金を計算していきます。
入院給付金など、実際の支払額より保険金が多い部分があっても、契約で保険金対象外だった通院の負担が大きい場合は、医療費控除を受けられる可能性があります。
【補填(ほてん)額として差し引く保険金の例】
- 入院給付金
- 手術給付金
- 先進医療給付金
- がん診断給付金 など
これからの医療に備えよう
医療費が高額になった場合、確定申告の医療費控除を利用して、所得税の負担を軽減することができますが、軽減額は限られます。また、所得税の負担が減るだけで、医療費の負担が軽減されるわけではありません。
将来の自分自身、あるいは家族の医療費負担に備えるには、適した保険に加入しておくことが大切です。今の保険で十分か、希望の保障は受けられるか、改めて保険を見直してみませんか?
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※掲載の情報は2020年9月現在のものです。保険や税制、各種制度に関して将来改正・変更される場合もあります。手続き・届け出の方法も随時変わる可能性や、自治体により異なる場合があります。
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