社会保険料控除とは?計算方法や必要書類・配偶者の控除をわかりやすく解説
更新日:2022/6/22
所得控除の一種である社会保険料控除。社会保険料控除の対象となる社会保険の種類は多く、控除を行うには一定の条件があります。また、会社員か自営業かの違いによって手続きが異なり、それぞれ年末調整や確定申告を行う必要があります。この記事では社会保険料控除の対象となる社会保険の内容から、控除を行う際の手続きまで詳しく説明していきます。
目次(読みたいところまで飛べます) 閉じる
社会保険料控除とは
社会保険料控除とは所得控除の一種です。1年間に支払った社会保険料を全額その年の所得から控除することができます。
対象となる社会保険には「国民年金」「厚生年金」「国民健康保険」「健康保険」「介護保険」「高齢者医療保険」「労働保険(雇用保険)」などがあります。納税者が自身の社会保険料だけでなく、配偶者や子どもなど同一生計の人の社会保険料も払っている場合、その分も対象となります。
社会保険料控除の対象になる保険料
ここからは、社会保険料控除の対象となる社会保険料についてそれぞれ詳しく解説していきます。
国民年金保険料
国民年金とは、日本国内に住む20歳以上60歳未満のすべての人が加入する公的年金制度です。働いていない20代の学生や配偶者、60歳未満で退職した人も保険料の支払いが原則必要になります。
会社員は給与から厚生年金が天引きされており、その保険料に国民年金保険料が含まれています。自営業者は保険料を自分で納める必要があり、社会保険料控除を受ける際は、日本年金機構から送られてくる控除証明書を添付して確定申告を行います。
厚生年金保険料
厚生年金とは、厚生年金保険の適用を受ける企業に勤務する会社員や、公務員が加入する公的年金制度です。保険料の半分を会社側が負担してくれる点が特徴です。
厚生年金に加入している人は国民年金と合わせて年金が2階建てになり、将来受け取る受給額が手厚くなります。保険料は給与から天引きされているため、別に納付書などで支払う必要はありません。天引きされた金額すべてが控除の対象となりますが、会社側が負担した部分は控除の対象になりません。
労働保険料
労働保険とは会社員を対象としており、労災保険と雇用保険の総称です。
労災保険料は一般的に会社が全額負担し、雇用保険料は毎月の給与に決められた保険料率をかけて算出された金額が給与から天引きされます。
会社員は一般的に控除の手続きを行う必要はありませんが、自営業者や中小企業の役員など労災保険に特別加入し保険料を自己負担している人は、確定申告書に記載して控除を受けることになります。
国民健康保険料
国民健康保険は公的医療保険制度の一種で、企業で加入する健康保険や公務員が加入する共済組合、後期高齢者医療制度など他の医療保険制度に加入していないすべての人を対象にしています。
会社員は勤務する企業の健康保険に加入し、保険料は給与から天引きされ、控除の手続きの必要はありません。一方、自営業者は国民健康保険に加入することが多く、控除の手続きが必要になります。国民健康保険では控除証明書がないため、自治体から送られてくる納付額通知書などで支払金額を確認し、確定申告書に記載して控除を受けることになります。
介護保険料
40歳になると介護保険への加入が義務になります。
40歳以上65歳未満の会社員は健康保険と同様に保険料が給与から天引きされるため支払いの必要はありません。40歳以上65歳未満の国民健康保険に加入している人は、国民健康保険料の中に介護保険料が含まれており、国民健康保険料を控除することで介護保険料も控除されたことになります。
65歳以上の人は年金の受給額によって、支払い方法が「特別徴収」と「普通徴収」の2種類に分かれます。受給額が年額18万円以上の場合、特別徴収となり年金から自動的に天引きされます。一方、受給額が年額18万円未満の場合、普通徴収となり口座振替や納付書払いなどによって支払うことになります。
国民年金基金の掛け金
国民年金基金とは、国民年金に加えて任意で加入できる公的な個人年金です。厚生年金のない自営業者などが老後の年金受給額を手厚くする目的で加入しています。
国民年金と同様に掛け金の全額が社会保険料控除の対象となります。控除を受ける際は、国民年金基金連合会から送られてくる控除証明書を添付して確定申告を行います。
社会保険料控除の計算方法
1年間に支払った社会保険料の全額が社会保険料控除の対象となります。
例えば、1カ月当たりの国民年金保険料が1万6540円のとき、年額は1万6540円×12カ月=19万8480円となり、これを所得から差し引きます。同様に他の社会保険料も差し引いていき、社会保険料以外の所得控除(医療費控除など)も差し引いて、残った金額が課税対象となります。
会社員は年末調整によって控除を行います。ただし、転職などによって就業していない期間があり、期間中の社会保険料を自分で支払っている場合は、転職先で扶養控除等(異動)申告書を提出する際にその金額を控除する手続きが必要です。
社会保険料控除の上限はいくら?
他の所得控除とは異なり上限がありません。その年に支払った社会保険料と、給与から天引きされた金額の総額が控除対象となります。
社会保険料控除の申請に必要な書類
社会保険料控除証明書と源泉徴収票(厚生年金保険料を納めている人のみ)の2点が必要です。保険料や掛け金を支払ったことを証明する控除証明書の原本を確定申告の際に添付しなければいけません。源泉徴収票は確定申告書を記入する際に必要になります。以前は源泉徴収票を添付する必要がありましたが、現在は添付不要となっています。
国民年金・国民年金基金に加入している人は、毎年10月ごろに控除証明書が日本年金機構から送られてきます。その他、自分で支払っている社会保険料がある場合は、その支払いを証明する書類を保管しておきましょう。
社会保険料控除証明書を紛失した場合は?
万が一、控除証明書を紛失してしまっても、年金事務所に問い合わせれば再発行が可能です。ただし、再発行まで時間がかかる場合があるため、確定申告の期限に間に合うよう余裕を持って問い合わせましょう。
社会保険料控除の方法
社会保険料控除を行う方法は「年末調整」と「確定申告」の2つに分かれます。ここから、それぞれ詳しく説明していきます。
年末調整
年末調整とは、主に企業に勤める会社員が年末に行う、所得税の過不足を精算する手続きのことです。毎月の給与から所得税や社会保険料が天引きされていますが、年末にその年の所得が確定したタイミングであらためて所得税の額を計算し、社会保険料控除などの所得控除も含めて過不足を精算します。一般的に11月中旬から始まり、必要書類を提出し、12月の給与・賞与において過不足税額の還付または徴収が行われます。
確定申告
確定申告とは、自営業者や会社役員などが年度末に行う、所得税の過不足を精算する手続きのことです。2月から3月の期間に行われ、前年1月から12月の所得を税務署に申告し、社会保険料控除などの所得控除を行った上で算出された所得税を支払います。雇用主から源泉徴収された給与を受け取っている場合は、確定申告によって所得税が還付される場合もあります。会社員でも、医療費控除や雑損控除など、年末調整で手続きできない所得控除を受ける場合は、確定申告を行う必要があります。
配偶者の社会保険料控除を受けるには?
自分自身が支払う社会保険料だけでなく、同一生計の配偶者が支払う社会保険料についても一部を所得から控除することができます。また、社会保険料控除とは別に「配偶者控除」や「配偶者特別控除」を利用して所得控除を行うこともできます。
配偶者控除
配偶者控除とは、給与収入が103万円以下の配偶者がいる場合に受けられる所得控除のことです。以下の要件を配偶者が満たした場合に、13万円から最大38万円の控除を受けることができます。
[配偶者控除の条件]
①配偶者を養っている納税者の年間合計所得が1000万円以下であること
②内縁関係ではなく民法の規定による配偶者であること
③納税者と同一生計であること
④青色申告者の事業専従者として給与の支払いを受けていないこと
⑤給与所得以外の不動産所得や事業所得がある場合、それらを含めた合計所得金額が48万円以下(令和元年分以前は38万円以下)であること
配偶者特別控除
配偶者特別控除とは、給与収入が103万円超201万円以下の配偶者がいる場合に受けられる所得控除のことです。以下の要件を配偶者が満たした場合に、納税者と配偶者の所得額によって1万円から最大38万円の控除を受けることができます。
[配偶者特別控除の条件]
①配偶者を養っている納税者の年間合計所得が1000万円以下であること
②内縁関係ではなく民法の規定による配偶者であること
③納税者と同一生計であること
④青色申告者の事業専従者として給与の支払いを受けていないこと
⑤給与所得以外の不動産所得や事業所得がある場合、それらを含めた合計所得金額が48万超133万円以下(平成30年分から令和元年分までは38万円超123万円以下)であること
【まとめ】社会保険控除の仕組みをしっかり理解しよう
会社員は給与からの天引きによって保険料の支払いや控除が自動的に行われていることもあり、社会保険料控除に関する手続きは比較的少なく済みます。一方で自営業者は支払いや確定申告など自ら行うべきことが多くあります。必要以上に所得税を支払わないためにも、社会保険料控除の仕組みと手続きをしっかり理解することが重要です。
ゼクシィ保険ショップでは、ライフプランニングでこれからかかるお金などを見える化し、そこから必要な保険を提案します。また、保険に限らず、家計管理や、税金にまつわる問題についても相談できます。
※掲載の情報は2022年6月現在のものです。保険や税制、各種制度に関して将来改正・変更される場合もあります。手続き・届け出の方法も随時変わる可能性や、自治体により異なる場合があります。
RT-00499-2206