妊娠・出産のときに知っておきたい、公的制度と保険の見直しポイント
更新日:2020/10/2
ライフステージが変わる妊娠・出産時は、生命保険の見直しをする絶好の機会です。家族が増えるわけですから、 自分たち家族に合った保険加入ができているかを確認しましょう。特に妊娠・出産の際に入院するとなると、医療費もかかります。 貯蓄や保険などで備えて準備をしておきたいものですね。ここでは、妊娠・出産に関わる公的制度、 保険見直しのポイントから子どもが生まれた後の教育費と備え方についても押さえておきましょう。
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妊娠・出産に関わる公的制度、その中身とは
妊娠・出産に関わる主な公的制度として、出産育児一時金と出産手当金があります。似たような名前ですが内容が違いますので、ここで確認しておきましょう。
妊娠4カ月目(85日目)以降で出産したとき支給されるのが、出産育児一時金です。加入している健康保険から、1児につき定額42万円の給付を受けることができます。(全国健康保険協会より。2020年8月時点)。出産育児一時金は、健康保険の被扶養者となっている会社員の妻でも給付を受けることができます。通常分娩(ぶんべん)や定期健診では健康保険を使えず全額が自己負担になるため、その費用を補うための給付制度だと捉えてください。
一方、出産のために仕事を休み、 給料を受け取れないときに支給されるのが、出産手当金です。同じく健康保険からの給付ですが、国民健康保険にはこの制度がありません。 つまり、自営業者やフリーランスは対象外。支給期間は出産日(出産予定日より遅れた場合は予定日)以前42日(多胎妊娠は98日)から出産日翌日から56日までの期間です。 給付金額は、1日につき標準報酬日額(給料の日額)の3分の2です。出産手当金は健康保険の被保険者が出産して産休を取ったときに対象となるので、働いている人でも夫の扶養に入っている場合は対象外となりますので、注意が必要です。
育児期間中に使える公的制度とは
その他にも、育児期間中に使える公的制度があります。
まずは雇用保険から支給される育児休業給付金です。子どもが1歳になる誕生日の前日までの間に休業した日数分の給付金を受け取ることができます。 給付金額は、休業を開始する前の給料の日額×支給日数×67%(181日目以降は50%)です。給付金を受け取る条件は、 1歳までの子を養育するために休業していることと、休業前2年間に雇用保険の被保険者であった期間が12カ月以上あることと決められています。 安心して育児に専念できるよう、自分が支払い対象に該当していないか、確認してみてください。
また、「産前産後休業保険料免除制度」といって、産前産後に育児休業をしている期間、健康保険料・厚生年金保険料が免除になる制度もあります。免除になる期間は、 産前休業を始めた月からその育児休業が終わる日の翌日が属する月の前月まで。例えば、4月30日まで育児休暇を取得し、 5月1日に復帰すれば、4月分まで免除になります。一方、4月25日まで育児休暇を取得し、4月26日に復帰した場合は、 3月分までの免除となってしまいます。保険料免除は月単位で計算し、日割り計算はできませんので、このあたりはご注意ください。 妊娠・出産には何かと費用がかかりますので、これらの公的制度のうち、使えるものは忘れずに申請するようにしましょう。
妊娠・出産のときの医療保険の見直しポイントは?
妊娠すると、医療保険への加入を断られる場合があります。理由は、切迫流産や切迫早産、帝王切開といったリスクが高まるためです。中には加入できる保険もありますが、 妊娠・出産に関わる治療については支払い対象外となるケースもあります。 そのため、女性は妊娠する前に保険の見直しをしておくことをおすすめします。
また、大前提として、医療保険から給付金が支払われるのは、病気やけがの治療を目的とした入院のみです。 妊娠・出産は病気ではないので、正常分娩での入院は支払い対象外となりますが、帝王切開や切迫早産などの異常分娩では、給付金が支払われます。 最近は高齢出産や不妊治療などにより、帝王切開が増えています。
すでに妊娠中という場合は、少額短期保険といって、妊娠中でも少額の給付金を受け取れる保険があります。 中には正常分娩の入院でも給付金が受け取れるという商品もあるので検討してもよいでしょう。
子どもが生まれたときのために生命保険は見直すべき?
妊娠・出産時の入院には医療保険で備えておけば安心ですが、子どもが生まれた後、夫に万一のことがあったら、 その後の生活費や子どもの教育費が不安ですよね。そのため、死亡時に死亡保険金が受け取れる生命保険への加入も同時に検討したいものです。 必要な保障金額は、会社員か自営業者か、現在の貯蓄額はいくらなのか、また家族構成によっても変わってきます。 子どもが小さいうちは、まだ十分な貯蓄が貯まっていないことが考えられますので、万一の際残さされた家族が生活に困らないだけの保障を確保しましょう。
また、夫婦共働きなどで、女性の収入が家計の中で大きな割合を占めている場合は、女性も生命保険の加入を検討したいものです。 独身時からずっと同じ保険に加入していたり、保険に加入していないのなら、夫婦で話し合ってみてください。 子どもが生まれた後では育児で忙しくなるので、生命保険について出産前に余裕を持って考えておくのがおすすめ。 ぜひ出産前に検討してみてください。
教育費はどれくらい備えればいいの?
子どもが生まれた後は、教育費がいくらかかるのか気になるところですよね。幼稚園から高校を、すべて公立に通った場合の学習費は約543万円、私立に通った場合は約1,830万円も平均でかかることがわかっています。(文部科学省「平成30年度子供の学習費調査」より)
さらに大学に進学する場合は、国立大学で約499万円、私立大学は文系だと約717万円、理系で約821万円かかります。(日本政策金融公庫「令和元年度 教育費負担の実態調査結果」より)
その他、学習塾や予備校、家庭教師、習い事といった費用がかる場合があります。また、大学進学に際して一人暮らしをする場合には、 住居費や生活費などがかかります。子どもが希望する進学先に進めるよう、 早い時期から多めに教育費を準備したいものですね。特に、子どもが2人以上いて、ともに大学進学するとなると計画的な資金準備が不可欠です。
教育費に備えるための保険とは?
では、教育費を備えるためには、どうやって資金準備をしていけばいいのでしょうか。
まずは児童手当を使わずに貯めていくこと。児童手当は中学校卒業まで1人につき月額1万~1万5,000円(所得制限限度額以上の所得があると一律5000円)が受け取れます。これを貯めていくだけでも、大きな教育資金となります。
また、選択肢の一つとして「学資保険」があります。学資保険とは、子どもの進学に合わせて祝い金や満期保険金を受け取ることができる保険です。 低金利時代のため以前ほど利率はよくありませんが、保険料が毎月定額引き落とされるため、銀行預金のようにうっかり使ってしまう心配がありません。また、契約者である親が死亡した場合、 それ以降の保険料の支払いが免除され、進学祝い金や満期保険金は契約通り支払われるのも安心です。
学資保険の他には、 財形貯蓄や積立預金もおすすめです。子どもの誕生直後から教育資金の積み立てを始めれば、大学進学まで18年間あります。 銀行の積立定期や財形貯蓄を使い、こつこつ貯めていきましょう。会社の財形制度を利用して、 毎月の給与からの自動引き落としで貯蓄ができるような仕組みをつくることもおすすめです。
【番外編】教育費の準備が間に合いそうにないときは
資金準備が間に合いそうにない、または予定外にお金がかかりそうという場合には、奨学金制度や教育ローンを利用するという方法もあります。
代表的な奨学金制度は、日本学生支援機構による制度です。これには無利息の第1種奨学金と、利息付きの第2種奨学金があります。 第2種奨学金の方が、学力や年収等の基準がゆるく設定されているのが特徴です。
教育ローンには、公的ローンと民間ローンがあり、公的ローンの主なものには、教育一般貸付(国の教育ローン)があります。 日本政策金融公庫によると、融資限度額は、学生1人につき最高350万円(一定の要件に該当すれば450万円)、返済期間は原則、最長で15年です(2020年8月時点)。 固定金利で、世帯の年収制限(子どもの数によって異なる)があります。
奨学金や教育ローンは返済しなくてはならないため、その負担を、卒業後に子どもが抱えることは忘れてはなりません。安易に借りるのではなく慎重な検討が必要です。
妊娠・出産では、公的制度によって受け取れる給付金がありますが、給付金で補えない部分は貯蓄や保険などで備えるようにしましょう。 特に出産を希望する場合は、妊娠前に入院給付金を受け取れる医療保険へ加入することを検討しましょう。また、子どもが生まれると教育費を貯める必要が出てきます。万一のときに子どもが困ることのないよう、出産前から生命保険への加入を検討し、その後、学資保険や財形貯蓄、積立預金などを考えてみてください。 もし、独身時代から、あるいは結婚後に生命保険に加入したという場合でも、子どもが生まれたら、死亡保険金額が足りないという場合もあります。 妊娠・出産を機に、すでに加入済みの保険も見直すようにしましょう。
※掲載の情報は2020年9月現在のものです。保険や税制、各種制度に関して将来改正・変更される場合もあります。手続き・届け出の方法も随時変わる可能性や、自治体により異なる場合があります。
RT-00319-2009