妊娠で仕事を辞める? 続ける?その前に知っておくべきお金のこと
更新日:2020/10/2
妊娠・出産を機に、結婚前と同じ仕事を続けるか、パートや派遣に切り替えて働く時間を短くするか、専業主婦になるか、働き方について迷っていませんか?
仕事を辞めるか続けるかを考えるときも、家計を考える上でも、妊娠・出産に関わるお金のことを知っておくことはとても大切です。
いずれにしても助かるのが、妊娠や出産によって受け取ることができるお金(給付)。
どんなお金が受け取れるのか、しっかりと把握しているという人は決して多くないのですが、この記事では、気持ちよく妊娠から出産の期間を過ごせるように、また、お金をきちんと受け取れるように、詳しく解説していきます。それとともに、赤ちゃんが生まれた後の「ライフプラン」や「マネープラン」についても考えていきましょう。
目次(読みたいところまで飛べます) 閉じる
妊娠が判明!まずは上司への報告と今後の仕事について考えよう
妊娠がわかるのは大体妊娠5〜7週目。妊娠初期にやっておくべきことを紹介します。
まずは妊娠したことを上司へ報告
妊娠がわかったら、早めに直属の上司に報告をしましょう。妊娠初期はつわりが始まり、体調不良で急に仕事を休んだり早退したりしなければならないことも。上司に協力をしてもらえるようにしておくと安心です。
産後も仕事を続ける意思があれば、産休に入る時期と仕事に復帰する時期はあらかじめ上司に伝えておきましょう。また、仕事の引き継ぎ方法なども早めに相談しておくとスムーズです。退職を検討している場合は早めにその旨を伝えておきましょう。
妊娠したけれど仕事は続ける?辞める?
妊娠・出産は、自分のキャリアについて考えるいい機会です。出産後も復帰して続けたい仕事なのか、転職して別のキャリアを積むのか、仕事を辞めて専業主婦として育児に励むのか。生き方はさまざまです。
ただ、会社に在籍していれば受け取れるお金があることも知っておきましょう。それから仕事を続けるのか辞めるのかを決めても遅くはないですよ。
妊娠・出産で受け取れるお金について
妊娠や出産で受け取れるお金(給付)には、さまざまな種類があります。そのうち、「仕事を辞めても受け取れるお金」と、「仕事を続けていれば受け取れるお金」がありますので、それぞれをリスト化しました。条件や金額などを確認して、仕事を続けるかどうかの参考にしてくださいね。
【妊娠・出産に関して受け取れるお金一覧】
仕事を辞めても 受け取れるお金 |
仕事を続けていれば 受け取れるお金 |
|
失業給付金(失業手当) | △ | ☓ |
出産育児一時金 | ◯ | ◯ |
出産手当金 | △ | ◯ |
育児休業給付金 | ☓ | ◯ |
高額療養費 | ◯ | ◯ |
◯:該当する、☓:該当しない、△:条件による
仕事を辞めても受け取れるお金
仕事を辞めても受け取れるお金は、失業給付金(失業手当。条件による)、出産育児一時金、出産手当金(条件による)、高額療養費の4つです。順に説明していきましょう。
・失業給付金(失業手当)
失業した方を対象に雇用保険から給付される基本手当のことです。失業給付金(失業手当)を受け取ることができるのは、再度働こうという意思、つまり求職申し込みがあるのが大前提です。
しかし、妊娠・出産を機に退職した場合はすぐに求職申し込みを出せないので、「働く意思がない」と見られ受給が難しくなってしまいます。
ただ、妊娠・出産や育児を理由に退職したけれど「出産後一定期間たったら再び働きたい」という人は、「特定理由離職者」として、失業給付金(失業手当)の受給を最長3年間(受給期間も含めると4年間)延長する特例が受けられます。
この特例を利用するためには、退職の翌日から30日経過後以降、できるだけ早い時期にハローワークで手続きをしなければなりません。遅れてしまうと受給できる金額が減ってしまう可能性があるので、退職から2カ月以内にハローワークへ行くようにしましょう。
なお、この給付金は失業者が対象であり、会社に籍のある状態では受給できません。また、会社を辞めてから個人事業主などの仕事で収入を得ている場合も受給できませんので注意しましょう。
・出産育児一時金
出産に伴う費用に対して受け取れるお金で、出産児1人につき42万円(双子の場合は84万円)が支給されます。(出産育児一時金は全国健康保険協会より。)
この一時金は、会社を辞めて夫の扶養に入っている場合には夫の勤務先の保険協会に、会社を辞めていない場合は自分の勤務先の保険協会に申請して受け取ります。
つまりほぼ全員が受け取ることのできるお金ですね。
出産育児一時金は一般的に出産して退院した後に支給されます。でも、出産にかかる費用を一時的とはいえ全額立て替えると高額です。その支払いを回避できる制度として「出産育児一時金直接支払制度」があります。この制度を利用すると実際にかかった費用からあらかじめ、支給予定の42万円を引いた差額を産院に支払えば済むので、家計への影響が少なくて済みます。
直接支払制度が利用できるかどうかは入院する産院によりますので、事前に確認しておきましょう。
・出産手当金
出産手当金は、出産前後の生活を支えるために支給されるお金です。出産前42日〜出産翌日から56日を対象に、日給の約67%の金額が支給されます。もし予定日を過ぎて出産した場合でも、超過した日数分のお金もちゃんと支給されます。
勤続期間が継続して1年以上あり、かつ勤務先の社会保険に加入している人が対象となります(※)。もし、退職していた場合でも、退職後2年以内であれば、出産手当金を受給することができます。詳しくは、働いているうちに勤務先に確認しましょう。
※健康保険に加入していること、妊娠4カ月目以降の出産・流産・死産などであること、出産のために休業していることの3つの条件を満たす場合に支給されます。
なお雇用形態に制限はないので、勤務先の社会保険に加入していれば、正社員以外のパートやアルバイトでも受け取ることができます。
注意点は、申請に時間がかかるため、出産手当金がもらえるのは出産から数カ月後になることです。それまでの生活にかかるお金は、事前にしっかり確保しておきましょう。
・高額療養費
1カ月にかかった保険適用医療費の自己負担額が自己負担限度額を超えたとき、保険協会に申請すれば払い戻しを受けられます。この自己負担限度額は、世帯収入によって決められています。標準的な会社員であれば、8万円程度が自己負担限度額となり、それを超えた分が戻ってくるという仕組みです。
【自己負担限度額(70歳未満)】
所得区分 | 自己負担限度額 | 多数該当(※1) |
<区分ア> 標準報酬月額 83万円以上の方 |
25万2600円+(総医療費※2-84万2000円)×1% | 14万100円 |
<区分イ> 標準報酬月額53万~79万円の方 |
16万7400円+(総医療費※2-55万8000円)×1% | 9万3000円 |
<区分ウ> 標準報酬月額 28万~50万円の方 |
8万,100円+(総医療費※2-26万7000円)×1% | 4万4000円 |
<区分エ> 標準報酬月額 26万円以下の方 |
5万7600円 | 4万4000円 |
<区分オ(低所得者)> (被保険者が市区町村民税の非課税者等) |
3万5400円 | 2万4600円 |
※1 多数該当:診療を受けた月以前の1年間で3カ月以上高額療養費の支給を受けていると、4カ月目から「多数該当」となり、自己負担限度額がさらに軽減される。
※2 総医療費:保険適用される診察費用の総額(10割)。
高額な医療費を立て替えるのは負担が大きいという場合は、事前に「限度額適用認定証」を発行してもらいましょう。在職中であれば自分の会社の健康保険組合に、すでに退職して夫の扶養に入っているなら、夫の健康保険組合に申請してください。
申請書を提出すれば比較的早く交付してもらえます。この認定証があれば、自己負担限度額との差額分だけ支払えば済むので便利です。
自然分娩はこの対象外ですが、帝王切開や管理入院など保険適用の手術・入院をした場合は、対象となります。あらかじめ限度額適用認定証をもらっておくといいですね。
仕事を続けていれば受け取れるお金
仕事を続けていればもらえるお金は、出産育児一時金、出産手当金、育児休業給付金、高額療養費の4つです。出産育児一時金、出産手当金、高額療養費は上記で説明しましたので、残りの育児休業給付金について解説しましょう。
・育児休業給付金
育休中の生活を支えるために、雇用保険から支給されるお金です。対象期間は、出産手当金の支給が終わった翌日から子どもが1歳になるまで。もし保育園に入れなかった場合は、最長2歳になるまで延長することもできます。
支給される金額は、育休開始から6カ月間は前年月収の約67%、それ以降は約50%です。なお初回手続き以降も、2カ月に1度は再手続きをする必要がありますので、忘れずに勤務先に申請しましょう。
妊娠後も仕事を続けるか、夫婦でしっかり相談を
妊娠や出産に関する制度を踏まえて、今後仕事を続けるかどうかは夫婦でコミュニケーションを取って確認しましょう。退職して仕事を辞めた場合は家計への影響も大きくなります。最近は母だけでなく父も育児休暇を取るケースも増えていますので、ひとりで決めずに夫婦でしっかりと相談してくださいね。
家族が増えるタイミングこそ、これからのライフプランを考えるとき!
出産後は育児で多忙になるため、妊娠中の今が一番、今後のことを考えて行動しやすい時期です。「人生100年時代」といわれる今、将来の自分たちに必要なお金について、早めに、しっかりと考えておくことが必要です。
出産後のライフプランやお金について考えよう
出産して家族が増えると、自分や家族のライフプランやマネープランは大きく変わるため、今後のためにお金を守る・増やすことを考えるようになるでしょう。
具体的に考えておきたいことは、以下のようなものがあります。準備ができていますか?
・子どもの学費を貯める方法:
幼稚園〜大学まですべて公立だったとしても約1043万円はかかるといわれています。教育資金を準備する方法として、学資保険や貯蓄性のある生命保険、定期預金などの利用を検討する方もいます。
(教育費は文部科学省「平成30年度子供の学習費調査の結果について」、日本政策金融公庫「令和元年度教育費負担の実態調査結果」より試算)
・引っ越し・マイホームの購入:
ふたり暮らしの家では手狭になるため、他の賃貸物件への引っ越しやマイホームの購入を検討することも多いでしょう。家を買うなら、いくらくらいの物件にするか、どの金融機関で住宅ローンを組むか、何年で返済していくかなどを考える必要があります。
・生命保険や医療保険への加入:
自分やパートナーがけがや病気をしたり、万が一亡くなったりしたときに、家族がお金に困るような状況は避けたいところです。医療保険や生命保険への加入も検討しておきましょう。
・将来資金の貯蓄・運用:
最近は超低金利時代が続いており、「定期預貯金に預けていれば資産が増える」という時代ではなくなっています。自分やパートナーの財産を、日常生活の必要資金と将来のために貯めておく将来資金に分け、将来資金の一部を運用するなどして、資金を増やしていくことも考えるとよいでしょう。
ゼクシィ保険ショップでは、結婚や出産などのライフイベントを迎える方を中心に、家族のライフプランやマネープランについて、無料で相談を受け付けています。
今後のライフイベントに合わせて、ファイナンシャルアドバイザーが家計プランを作成してくれます。保険商品のご紹介や、保険の見直し相談も可能です。無理な勧誘は一切なし、何度でも相談無料です。
出産はお金について考える大事な機会です。ぜひじっくり相談してみませんか?
※掲載の情報は2020年9月現在のものです。保険や税制、各種制度に関して将来改正・変更される場合もあります。手続き・届け出の方法も随時変わる可能性や、自治体により異なる場合があります。
RT-00321-2009